情報の非対称性

娘と同居することで空き家になる家を

これに対して、金銭では借家人の不利益を補償できないと判断されるときには、正当理由を認めないという傾向がある(この点については、福井秀夫借地借家の法と経済分析八田達夫·八代尚宏編東京問題の経済学』東京大学出版会、九九五年が詳しい)借地借家法のもとでは、借家人に有利な判決が繰り返されてきた。
その結果、契約期間が終了しても家主は借家人を立ち退かせることはできず、そのために借家の供給が制限されるという事態を招いた。いったん他人に家を貸すと、十分な理由がないと契約期間が終了しても立ち退いてもらうことができない。そもそも住宅を他人に貸すという家主の行動が制そのために、約されてしまっ市場で供給されるのは、規模の小さな借家ばかりである。

シティタワー品川これはなぜだろうか借地借家法のもとでは、規模の大きな住居は永住を覚悟する人々が住むことになる結果、なかなか立ち退いてもらうことはできなくなってしまう。家主にとって唯一の戦略は、規模を縮小することである規模を小さくすれば、契約期間が終了するにつれて、借家人は自発的にその借家から立ち退く可能性が高い。わざわざ立ち退かせなくても、借家人が自動的に入れ替わってくれることが予想される。その結果、人々は規模の大きな住宅を人に貸すのをきらい、規模を小さくして貸そうとする。これが借地借家法の効果である。
前章でも触れたように、もちろん、外国人向けには規模の大きな借家が存在する。しかしそれは例外である。外国人は滞在期間が短い人が多く、契約更新をせずに、白発的に転居してしまう人が多いから、大きい住宅でも安心して貸せるのである。

なぜ悪徳家主が出現したのか正当事由制度だけで成立するものではない。その背後には、このような借地借家法は、家賃統制という性格も持っている。

借地借家法は、右に述べた借家人保護借家権保護と家賃統制の組合せである。この点を理解するために、借地借家法の歴史を紐解いてみようこれから戦争状じつは借地借家法は、一九三九年に導入された家賃統制令に基づいている。物価や家賃を統制しようと考えるのは、どこの国も同じである。
態に入るときに、このとき政新規家賃や継続家賃を統制の対象とした。つまり家賃の引上げをコントロールしようと府は、権利金については統制の対象とはならなかっしたのである。
しかし、一九四一年に正当事由制度が導入された。これは悪徳家主から銃後の生活を守るたその後、夫が戦争に駆り出されているときに、悪徳家主がそれにつけこんで、家族をめとされてきた。

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借家から強制的に立ち退かせるという事態を防ぐためのものであったといわれているなぜなら、統制が原しかし、家主の不当な立退き請求は、このような見方は皮相的である。家賃が統制されていても、権利金や敷金は統制の対象ではなかった。因だったからである。そ家主にとっては既存の借家人を追い出して新しい借家人を入れて、高い権利金を取るのため、つまり回転率を上げれば、かりに家賃が統制されていてことが合理的な方法だったのである。
借家の収益率を高めることができたのであるも、一九三九年から一九四一年にかけて、家主による不当な追い出し立退き請求このため、当局はこのような事態を解消するために、家賃統制を補完するものが頻発するようになった。厳格な正当事由がなければ、この結果、借家人を追として正当事由制度を導入したのである。
い出すことができなくなった。もちろん家賃統制令は廃止されたが、また、現在では、正当事由制度は残っている。家賃交家賃の上昇額は裁判官の判断に依存する。
渉が紛糾して裁判になると、正当事由制度と家賃統すなわち裁判官が決定するという意味での家賃統制は、依然として実質的な意味で残って制、家アメリカのレント·コントロールとこれと同じようなことが起きている。
世帯数が減る一九七○年代には、ニューヨークニューヨークでも、レント·コントロールが、ニューヨーク市の治安の悪化やひいては都市財政のの家賃統制悪化を招いたといわれているコントロールが存在した都市には、ニューヨークやボストンのように、日本と同じレント·立退きを抑制するための正当事由制度が存在した。
ように、これは当然のことである。もし正ニューヨークでも一九三九年から一九四一年までの日本で起こった,当事由制度がなければ、家主による立退き請求が頻発すると予想されるからである。

とと同じように、このような事態はエヴィクション·コントロール家賃統制を避けるために、通常、レント·コントロールと呼ばれる借家権保護と補完的になっている。
立退き制限かつて家賃統制が存在した都市でも、定期借家権と最近では、ボストンやボルチモアなど、正当事由を必要とせずに、新たに結ばれる借家契約については、契約の終了時点同じように、で借家人を立ち退かせることが可能になった。これはvacancydecontrolと呼ばれている。
ニュレント·コントロールを骨抜きにしようとする試みが始まっている。ヨークでも、住宅投資や更新投資はどのような影響を受けるだろさて、このような借地借家法のもとで、市場で決定される家賃よりも低く家賃水準が設定されることを家賃統制はいうまでもなく、

住宅投資に対する収益率は低下する。意味している。
その結果、家主にとって住宅の質を改善しても家賃を上げることができないとしたら、質を良くしたり、住宅に手を入れ、より大きなあまり合理的ではない。
住宅が傷んでも、修理もされず、規模の借家に造り替えることは、どんどん老朽化していく事態となる。また、新しくアパートが造られることもなく、古い住宅が温存される。

税務調査の件数否認された件数

これは借地借家法の長期的な効果である図2-1。さえも起きたニューヨークの家賃統制の歴史は、このことを如実に物語っている。戦後から一貫してあるニューヨークの家賃統制は、貧しい人たちの居住を守るために、家賃水準を市場家賃よりも低めに設定した。その結果、すでにアパートに住んでいる貧しい人たちの居住権は守られたが、潜在的な借家需要者の生活は守られなかった。前述のように、家主や投資家たちは、アパート建設に魅力を感じなくなってしまった。
家主たちはなるべく早く住宅が老朽化し、それによって早く借家人が出て行ってくれることを願った。そうすれば、アパトをやめて別の有利な用途に土地利用を変更するつもりでいた。家主が自分のアその結果、パートに放火する事件も起きたといわれる何が起こったか。住宅の質はどんどん悪化し、家主が再投資をしないため、その結果、スラム化が進んでいった。
治安は悪化し、裕福な人たちはニューヨークを離れて郊外に移ることにニューヨークのスラム化した地域では、地価が下がり、固定資産税の収入も激減した。
所得水準の高い人たちが郊外へ逃げ、そして都市の中心部は貧しい人たちのスラムと変わっていった。犯罪率の上昇が続いた。

多摩グリーン賞さらに財源の不足のために、そこでは治安の悪化と、ニューヨク市当局も公共支出を削減せざるをえず、公共サービスの質はさらに悪化した。これがさらに地価を低下させるという悪循環を招いた。家賃統制に対する見直しを検討し始める都市が増えていったのであるこのような反省から、(アメリカやイギリスの家賃統制については、阿部·野村·福井編『定期借家権』信山社、九九八年所収の島田·阿部·福井·八田論文、および西村論文を参照)。
アメリカの都市で起こった現実や、日本での借家市場の問題点(ファミリー向け借家の不足老朽化等)を考慮すると、借地借家法を改正すべきことは明らかである。日本には依然として借地借家法を支持し、定期借家権の導入に反対する人たちが少なからずいる。まずは、その人たちの意見に耳を傾けることにしよう。

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