現場のプロが教える

高齢社会

逆に、点E;よりも左側では、ドライバーの費用額が節約額を上回る住民の申し入れに応じるのは不利である結果、逆に、汚染権は被害住民が所有しているとしよう。ドライバーは、きれいな空気や静かな環境を利用できないのだから、交通量はゼロになる。つまり、原点0から交渉がスタートする。このときドライバーは、自動車利用を1単位増やすためには、被害住民に円を支払い、汚染権を買い取らなければならない。このときドライバーにとっての限界費用は、ガソリン代等にSS曲線になる。
被害住民は、追加的な被害額はTPを追加したものになる結果、円に等しいから、ドライバーの申し入れに応じるだろう。T円を支払っても、点E;より左側では、ドライバーは便益を得ることになるから、交渉によってやはり点E,が実現される効率的な均衡が実現できるのは、ドライバーと被害住民が交渉によって汚染権をこのとき、取引したからであるこのように外部性が存在するときには、市場は資源の効率的利用に失敗する。

これは見方を変えると、権利が誰に帰属するのか明らかでない財が存在しているから、市場メカニズムが働かないことを意味している。右の例でいうと、騒音や汚染物質という環境要因についての権利·義務関係が当事者間で明確になっていない点に一つの原因がある。

これならいける所得権·財産権がすべての財について規定されていることはもちろんのこと、環境や組織内での権限についても誰が責任を持つのかが明らかにされていれば、市場の失敗を解決することができる。このように効率的な資源配分が実現するとい権利の配分さえ明らかにしておけば、自由な交渉によって、う点を理論的に明らかにしたという意味で、コースの定理はたいへん重要な意義を有している。

土地·住宅市場のミスマッチ

土地·住宅市場には、さまざまなミスマッチが発生している。
住宅を貸したいのに貸せない人がいる一方で、借りたいのに借りられない人がいる。これが、前章で説明した賃貸借市場のミスマッチである。もう一つのミスマッチは、住宅の資産市場においても発生している。
適当な価格で土地や住宅を買いたいと思っている人々がたくさんいる。他方、土地や住宅を売りたいと考えている人々がいるにもかかわらず、売買は成立しない。

収入証明書(源泉徴収票·納税証明書·確定申告書の写し)

市場制度は、本来、このようなミスマッチを需給均衡によって効率的に解消するための社会的装置である。しかし、何らかの理由から、この市場メカニズムがうまく機能しなくなっているこの章では、このミスマッチ、とくに土地·住宅の売買を阻害している原因について考えてみよう。四人家族向けの借家は少ない前章で述べたように、ファミリー型の住宅を需要している人たちにとって、適当な賃貸住宅を探すのは容易ではない。四人家族で住むのに適当な広さで適当な家賃のアパートを探そうとすると、たいへんむずかしい。
他方、子どもたちが独立してしまうと、かつ高齢者たちは比較的大きな住宅に住んでいる。て住んでいた住宅の広さは、もはや必要なくなる。子どもたちがいたときにくらべると、夫婦二人で住むためには、かつての住宅は広すぎる。より高齢化すると、これまでとは違ったタイプの住宅が必要になる。たとえば、バリアフリー住宅は高齢者にとって必須なものである。
また、介護サービスが簡単に行えるような住宅サービスや、より高度な医療サービスまで追加された住宅サービスも必要となってくる。
このような潜在的な需要がたくさんあるにもかかわらず、それらを備えた住宅サービスは、現在のところ十分には供給されていない。
土地のリースに人生を救われた賃貸借市場が整備されれば、お年寄りたちは自分の家を貸して、適当な広さの住宅に移り住むだろう。これに対して、いくら高齢化が進行しても、あらゆる住宅をバリアフリー化するのは、経済人生の一定の期間だけである。むしろ、的ではない。バリアフリーを必要とするのは、バリアフリーの住宅を賃貸住宅として供給し、バリアフリーのサービスが必要となったら、高齢者専用住宅に移り住むほうが、安上がりである。ライフスタイルや家族構成の変化にともなって住宅を改築するよりも、適当な住居に移転していくほうが合理的である。
しかし、現実には、さまざまな理由から住宅の売買や賃貸は制約されている。定期借家権は朗報となるお年寄りたちが住んでいる。現状は、四人家族で住むのに適した住宅には、そのような住宅は市場では供給されない。『住宅統計調査』によれば、六五歳以上の単身持家世帯が総務庁の保有する住宅の広さは、これに対して、およそ10㎡である。

借家に居住する四人世帯は約KOE8住まいに住んでいるもし賃貸借市場が十分に整備されており、いつでも自由な契約を作って住宅を貸すことができるようになれば、ミスマッチは解消されるだろう。子どもたちが独立してしまった夫婦の家を他人に貸すことができれば、その夫婦にとってたいへん好都合である。
他人に貸して得る家賃収入から、自分たちはより小さな適当な規模の住宅に移り住んで、その家賃を支払うことが

できる。
新たに小さな家を購入するための資金にすることもできる土地や住宅の評価が金融資産にくらべて低いため、現在の相続税制のもとでは、子どもたちへの相続財産として土地や住宅を保有することが合理的である。

受贈益と過去から繰り越されてきた欠損金が相殺され

したがって、大きな住宅を保有する老夫婦にとってみれば、それを人に貸して、自分たちが死んだ後に、子どもたちに住宅が返ってくるようにすれば十分である。そのためにも、賃貸借市場を活性化する必要があるこの方法として、定期借家権は格好の賃貸借契約であるたくさんの人々が、ファミリー向けの規模の大きな賃貸住宅を必要としている。差し当たり頭金を貯めるために、適当な広さの賃貸住宅で我慢しようとしている人たちにも、定期借家権は朗報となるであろう。また、定期借家権を利用すると、終身契約の高齢者向け介護サービス付き賃貸住宅も供給されるであろう。
自治体が銀行の役割を果たす武蔵野方式と呼ばれる一種のリバース·モーゲージは、このようなシニア世帯が保有する住宅を現金化,流動化する方法の一つである。これは、高齢者の保有する豊かな資産を担保にして現金化しようというものである。高齢者はみずからの保有する土地や住宅を担保として金融機関に提供し、そのかわり一定の資金を銀行から毎期毎期受け取る。

父の相続発生時点その資金は、介護のためのお金や毎期每期の生活資金とし高齢者が亡くなったときに、原資が返済されるて使われる。その土地や住宅は処分されて、この制度が武蔵野方式と呼ばれる所以は、武蔵野市が始めたものだからである。リバース.モーゲージの銀行の役割を、自治体が果たす点に特徴がある。これはなかなかおもしろいアイデアと思われるが、自治体が地価の下落によって生じる資産価値の下落や高齢者の寿命というリスクに対応できる能力を果たして持っているかどうか、疑問である。
地価の下落によって生じた担保割れや寿命予測の誤りは、納税者の負担となって跳ね返ってくる。このとき、資産を持たない一部の納税者から、資産を保有していた人々への所得移転が生じる。これは明らかに不公平である武蔵野方式は苦肉の策そもそも、このような方法が必要とされるのは、高齢者が保有する土地や住宅を有効利用する方法がなかったからである。
定期借家権の導入によって賃貸借市場が活性化すれば、高齢者が資金をファイナンスするための新たな方法が生まれる。
高齢者は、自分の持っている大きな住宅や土地を賃貸し、そこから得た資金で自分たちの老後のための必要資金をファイナンスすることができる。大きな家を貸したい人が潜在的にはたくさんいる。しかし賃貸借市場の取引が借家法によって限定されているために、武蔵野方式という苦肉の策が考え出されている。

Tagged as: ,